common diseaseよくある耳科疾患について

外耳炎ってどんな病気?

Treatment for ear disease

外耳炎とは

まず外耳とは何かを理解する必要があります。外耳は耳の構造の中でも耳の入口から鼓膜の手前までの部分を指します。外耳炎とはこの外耳の領域に炎症が起こっている状態のことをいいます。 外耳炎は生死に関わるような緊急性の高い疾患ではありませんが、わんちゃん、猫ちゃんの生活の質を著しく低下させます。それは「持続するかゆみ」「鼓膜刺激による痛み」「治りにくく、治療が長期化しやすい」「再発を繰り返しやすい」などといった理由があり、通院の頻度も週1回という方も少なくありません。

外耳炎の症状として、初期のものとしては以下のものがあります。

外耳炎の初期症状

  • 耳が赤い
  • 耳が臭い
  • 耳垢が増える
  • 耳を振ったりする

また外耳炎が慢性化、重症化すると以下のような症状が出てきます。

外耳炎の症状

  • 耳の痛み、出血
  • 耳道閉塞
  • 難聴
  • 斜頸、眼振といった神経症状

できるだけ症状が軽いうちに対処することが長期化、重症化を防ぐポイントです。

外耳炎の原因

外耳炎の原因は非常に細かく分類されており、現在はPSPP分類という方法が広く用いられています。この分類法には原因となるものを「主因」「副因」「持続因子」「素因」と4つのグループに分けています。再発を繰り返す外耳炎やそもそも改善が見られない外耳炎にはこれらの分類に沿って、1つずつ原因の除去を試みる必要があります。

主因(Primary Causes)

主因とは、それ単独で外耳炎を発生させることができる直接的な原因です。逆にいうと、主因以外の要因が存在したとしても主因がなければ、外耳炎が発生することはありません。 そのため、外耳炎の管理にはいかに主因をうまくコントロールするかが重要です。これがうまくいかないと「治らない、繰り返す外耳炎」が生まれてしまいます。 主因の管理で大事なのが、その原因が治療することで完治できるかどうかという点です。感染や耳道内の異物が原因であれば、それを除去することで完治が期待できます。それに対して、アレルギー、角化異常、ホルモン分泌異常、免疫疾患などは根治が困難なことや、生涯にわたって治療が必要になるケースが多いです。

主因に含まれるもの

感染症
ダニなどの寄生虫、皮膚糸状菌
アレルギー
アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、ノミアレルギー性皮膚炎など
角化異常
脂漏症、脂腺炎、亜鉛やビタミンなどの微量元素の欠乏症
分泌腺異常
耳垢線と脂腺の過形成
異物
毛、砂、植物などの耳道内への侵入
内分泌失調
甲状腺機能低下症、副腎皮質機能亢進症、性ホルモン失調症
免疫介在性疾患
葉状天疱瘡、エリテマトーデス、多形紅斑、薬疹、血管炎など
ウイルス
ステンパーウイルス、エイズウイルスなど
その他の特殊疾患
  • 犬アトピー性皮膚炎
  • 犬ニキビダニ症
  • 脂漏性皮膚炎

これらの中でも外耳炎の主因のトップはアトピー性皮膚炎と食物アレルギーです。

また、外耳炎になりやすい犬種というのがあります

外耳炎になりやすい犬種

アレルギーが多い
柴犬、ラブラドールレトリーバー、フレンチブルドッグなど
角化異常が多い
シーズー、コッカースパニエル、ダックスフンドなど
耳道の構造異常
フレンチブルドッグ、パグ、チワワなど
耳毛が多い
トイプードル、ミニチュアシュナウザー

副因(Secondary Causes)

副因とは外耳炎が起こった後に二次的に発生し、外耳炎の悪化を促進する要因です。副因の多くは、耳道の洗浄や投薬により完全に除去することが可能です。副因の管理は外耳炎治療の中で重要なファクターですが、主因の管理が良好になると副因の管理も容易になることが多いです。 耳の中は「自浄作用」といって、耳の奥にある耳垢を外に向かって排出する能力があります。外耳炎が発生し自浄作用が働かなくなると、耳の環境が悪化し最近やカビにとって増殖しやすい環境に変化していきます。

副因に含まれるもの

感染の悪化
ブドウ球菌、緑膿菌、マラセチアなどの増殖
間違った治療
点耳薬に配合される基材による刺激、綿棒の使用、頻繁な洗浄など

持続因子(Perpetuating Factors)

持続因子とは外耳年が起こった後に発生する耳の構造変化のことです。外耳炎をより重症化させる根本がこれです。外耳炎の初期の持続因子としては、耳道のむくみ、過剰な耳垢の貯留、上皮移動障害などがありますが、これらの要因は抗炎症薬の使用や洗浄によって十分に管理が可能です。初期の外耳炎が見逃されたり、適切な治療が行われず慢性化すると、耳道の狭窄や鼓膜の穿孔、耳道の周囲組織の石灰化などの重篤な持続因子が発生してしまいます。これらの状態まで進行すると単純な内科治療での管理は困難で、多くの場合は麻酔下での処置が必要となります。

持続因子に含まれるもの

耳道の変化
耳道のむくみ、狭窄など
耳道上皮の変化
耳垢の溜まりすぎ、上皮の移動障害
分泌腺の変化
汗腺の閉塞と拡張、皮脂腺の過形成など
鼓膜の変化
鼓膜の肥厚、穿孔など
耳道周囲の組織の変化
石灰化(耳道周囲が石のように固くなってしまいます)
中耳の変化
真珠種、中耳炎の存在、中耳内での細胞屑の貯留

素因(Predisposing Factors)

素因とは外耳炎が発生する前から存在し、外耳炎が発症する可能性を高めるものです。素因の中には主因として勘違いされているものがいくつかありますが、素因単独で外耳炎が起こることはありません。代表的な勘違いは「垂れ耳だから外耳炎になる」です。垂れ耳というのは素因ですので、正しくは「垂れ耳だから外耳炎にはなりやすいけど、根本原因は他にあるのでそちらを考えましょう」となります。

素因に含まれるもの

耳の形態的問題
耳毛が多い、垂れ耳、耳道が細い(短頭種に多い)
湿った環境
高温多湿の環境で飼育、水泳などで頻繁に耳道に水が入る
閉塞性病変
ポリープ、腫瘍など
原発性中耳炎
滲出性中耳炎、腫瘍や呼吸器疾患による中耳炎など
全身性疾患
衰弱、免疫抑制状態など
他の治療の影響
抗生剤乱用による細菌の変化、過度な洗浄処置による耳道構造の損傷

外耳炎の検査方法

耳を外から見た時に赤みがあり、痒みが伴っている場合は一旦外耳炎と診断して間違いありません。そこからまずはビデオオトスコープ(耳道内視鏡)を用いて、耳道の状態を確認します。この時に耳道の色、むくみ、毛の状態、耳垢の色や質、鼓膜の状態までできるかぎり観察します。 耳垢が溜まっている場合は耳垢の検査を行い、細菌やカビが増殖していないかどうかを調べます。 上記の一般的な外耳炎の検査に加え、高齢から発症した外耳炎の場合は血液検査やレントゲン検査を行うことがあります。これはホルモン分泌異常や体の構造異常を伴うことがあるからです。 ビデオオトスコープで鼓膜を観察した際に中耳に異常がある所見が得られた場合には治療に進む前にCT検査を行い、中耳や耳道壁の状態を確認する必要があります。

外耳炎の治療方法

急性外耳炎

急性外耳炎では、夏場になると発生するなど環境要因が関わっていたり、一時的な菌の増殖などで再発性外耳炎に至らないケースが多いです。 まずオトスコープで耳道内を確認し、耳道の状態、耳垢の有無、鼓膜の状態を評価します。 耳道の腫れが軽く耳垢が溜まっているだけの場合が多いため、耳垢の成分や感染状況を確認した上で、耳道を洗浄し適切な点耳薬を使用していただくことで数日で改善が期待できます。

慢性外耳炎

耳を含めた全身の身体検査と各種検査による主因の探索 再発を繰り返している外耳炎では、主因が管理されていないことが長期化する一番の原因です。飼い主様からの問診や動物種、品種、年齢から発症したタイミング、これまでの治療歴などを総合して、原因を探っていきます。 耳の症状を主訴にご来院された場合でも全身のチェックを行うことによって、それまで診断されていなかった疾患が見つかり、それを治療することで耳の状態が安定することもああります。 特にアトピー性皮膚炎、食物アレルギー、免疫介在性疾患によって引き起こされた外耳炎は、根本をうまくコントロールすることによって、外耳炎も発症頻度を激減させることも期待できます。

ビデオオトスコープによる耳道内の観察(素因と持続因子のチェック)と検査 耳の治療を始める際に当院ではまず、ビデオオトスコープによる耳道と鼓膜の確認を行います。この時、症例の体調に問題がなければ、鎮静をかけてからの検査を推奨しています。 耳道内にスコープを入れること自体に慣れていない子が多いため、嫌がってしまい鼓膜が詳細に観察できないからです。鼓膜の評価はその後の治療プランに大きく関わってくるため、できるだけ鎮静下で初回のチェックを行わせていただくようにしています。 ただし、この時点で耳道の狭窄が激しく、スコープが挿入できない場合は先にステロイドを使用して炎症を治めてから、再度耳道のチェックを行うことがあります。

ビデオオトスコープを用いての徹底的な洗浄と薬液を用いた耳浴 耳道の状態が確認できたら麻酔前検査を行い、麻酔をかけられるかを評価します。その結果、体調面に問題がなければ全身麻酔をかけ、オトスコープを用いての処置に移ります。 耳道が耳垢で満たされている場合は、チューブや鉗子を用いて耳垢の除去を行います。耳道内にポリープや腫瘤があり、耳垢の排出を邪魔している場合には、レーザーを用いて切除することもあります。また、鼓膜の評価の結果、中耳内に膿が溜まっていると判断された場合には、鼓膜に穴をあけて中耳内を洗浄することもあります。 一通り耳道内のきれいにした後は、適切な抗菌剤を用いて耳浴を行います。市販の点耳薬よりも高い濃度の薬を長時間浸漬させることができるため、慢性の感染性外耳炎には非常に高い効果を発揮してくれます。

オトスコープ処置後の定期的なアフターケア オトスコープはそれをやったら、全てが解決するような治療法ではありません。あくまで外耳炎治療には複数の選択肢があり、その中の一つと考えています。 ですので、オトスコープで一度完全に耳垢を除去してもそのままにしておいたら、いつかは同じような状況になってしまうでしょう。そうならないように最低でも月1回の定期チェックに来ていただくようにしています。

症例紹介

Case study

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